とりあえず、"SO WHAT?"

30代後半からエンジニア転職を目指すパート主婦が、転職活動や日々思った事を自由気ままに綴る雑記ブログ

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介護報酬の算定要件から考えさせられた事【面倒臭いローカルルール】

湖畔で本を読む女性

以前私はエンジニア転職の記事で、現職場の求人票を見た時、そのあまりに低い時給を見て、ブラック企業とまではいかなくてもグレーな企業かもしれないと思ったと書きました。

本日はそんな職場で起こったエピソードになります。

プロローグ

あるフルーツショップでは、りんご(大)150円、りんご(中)100円、りんご(小)50円という値段表示があったとします。

あなたはご自身が(中くらいかな)と思われるりんごを持ってレジに行くと、女性店員から「150円頂戴します」と言われました。

(ああこれは大きいりんごだったんだ)と思ったあなたは150円を出し、その『大きい』りんごを買いました。

あなたが店を出ようとすると、別の客が、あなたの持っているりんごと同じくらいのりんごを持ってレジに行きました。

レジにいたのはさっきの女性店員ではなく、男性店員でした。

彼はその客にこう言いました。

「50円になります」

だって税金だもの

日本では、国民皆保険制度により、たいていの医療機関保険診療が可能となっています。

保険料を納めた被保険者が医療機関で医療サービスを受けた場合、負担金はその一部にとどまり、残りは診療報酬として医療機関が審査支払機関に請求します。

ただしこの請求をする為には、被保険者に医療サービスを提供したという事実はもちろんですが、請求する医療機関側が診療報酬で定められている要件(条件)をクリアしておく事が前提になります。

例えばリハビリに関して言えば、どんな疾患が対象か、どんな場合に単位を取れるのか、単位は何点なのか等、事細かく書かれています。

守らなければならない事が多いので面倒臭いと言えば面倒臭いのですが、働いていればなんとなくわかるようになってきますし、逆に守らなければならない事がはっきりしているので、(あれ?これって大丈夫??不正請求にならないかな)という不安はありません。

では介護保険の場合はどうでしょうか?

医療保険介護保険で大きく異なるのは被保険者に年齢の下限が定められている事です。

介護保険の被保険者は65歳以上(第1号被保険者)、40~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)となっています。

(被保険者は40歳以上なので、仮に39歳以下の方が怪我や病気などで要介護認定を受けたとしても、介護保険による補助金やサービスを受ける事はできません)

そしてもしこれらの被保険者に介護サービスが必要になった場合、まずは要介護認定をいうものを受ける必要があります。

1 要介護認定とは
介護保険制度では、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、介護サービスを受けることができる。
○ この要介護状態や要支援状態にあるかどうか、その中でどの程度かの判定を行うのが要介護認定(要支援認定を含む。以下同じ)であり、保険者である市町村に設置される介護認定審査会において判定される。
○ 要介護認定は介護サービスの給付額に結びつくことから、その基準については全国一律に客観的に定める。

                       
引用元:厚生労働省

介護サービス事業所が介護保険の被保険者(認定済み)に介護サービスを提供した場合、介護報酬として一部を利用者に、残りを国民健康保険団体連合会(国保連)に請求できます。

介護報酬も診療報酬と同じように事業所側が守らなくてはならない要件が定められており、当然ですが介護報酬を請求する以上はそれがきちんと守られている事が前提となっています。

事業所が適正な運営を行なっているかは自治体から出向いた担当者によって定期的に確認され(実地指導)、もしその際に著しく不適切な点が見受けられた場合は運営基準違反等に対する改善の勧告・命令を行ないます(監査)。

仮に事業所がこの勧告・命令に従わなかった場合は、指定を取り消されたり、介護報酬を返納しなくてはならなくなったりと、重い処分が下される事もあります。

ここまで少し難しい説明が続きましたが、これらをサクッとまとめると、「医療保険と違って、介護保険は40歳以上が納める」、「診療報酬も介護報酬もみんなから集めた保険料と税金で成り立っているので、それを報酬として請求するからには、請求する側もあらかじめ定められたルールをきちんと守る必要がある。もし悪質な違反があった場合は、それなりの罰が待っている」という事になります。

そんな介護報酬において私が関係しているのは主に2つで、それは運動器機能向上サービス加算と個別機能訓練加算になります。

介護施設において機能訓練指導員が利用者に対して訓練を行なった場合、利用者の認定区分が要支援の場合は運動器機能向上サービス加算、要介護の場合は個別機能訓練加算を請求する事ができます。

もちろん実地指導で何らかの指摘を受けたり、万が一監査にでもなってしまっては大変なので、法令遵守を意識しながら業務にあたらなくてはならないのですが、そもそも介護報酬の算定要件は診療報酬のそれとは違って、ちょっと抽象的でわかりにくい部分があるなぁというのが私の印象です。

ある利用者さんのエピソード

私が現在の職場に入職して3ヶ月目を迎えた頃、ある利用者さんが誤嚥性肺炎のため入院になりました。

うちの職場はデイサービス、住宅型有料老人ホーム(居室8室)、事務所が同じ敷地内にあり、職員は施設(デイサービスとホームに関する業務を担当)、ヘルパー、訪問看護、居宅介護支援事業の4つの部署に配属されます。
(私の所属は施設です)

その利用者さんはホームの入居者さんで、入院当初は元気だったので、当然良くなってすぐに帰ってくると誰もが思っていました。

ところが我々の予想に反して肺炎の状態が思いの外悪く、レントゲンを撮ってみたところ左の肺は真っ白だったそうです。

酸素がなくては生きられない。

酸素も4リットルほど流してSpO2が80%まで上がるかどうか。

申し送りではそんな状況報告が度々あったので、おそらくそのまま病院で最期の時を迎えるんじゃなかろうかと、多くの職員が思っていました。

そんなある日、私は管理者に呼ばれました。

指示された通り相談室として設けられた狭い個室に行くと、当時訪問リハとデイサービスを兼任していた作業療法士の女性も同席していました。

管理者はそこで、入院している例の利用者さんが病院での治療の余地がなくなった為、しばらくしたらホームに帰ってくると言いました。

さらに今は経口摂取が不可能でCVポートをしているけど、家族がどうしても口から食べれるようになって欲しいと希望しているから、いずれそうなれるようにリハビリをして欲しいと付け加えました。
CVポートは皮膚の下に埋め込んで薬剤を投与するために使用するカテーテルです。この方の場合は高カロリーの点滴を行う為に使用していました)

突っ込みどころ満載の無茶な要求でしたが、私の頭の中にはある疑問がよぎりました。

当時私の職場では個別機能訓練加算(II)を算定しており、この利用者さんに訓練を行なった場合はこの加算を請求する事になっていました。

私はそれまで医療機関での就労はあったのですが、介護施設での就労経験は無いに等しかったので、現在の職場で働くにあたって介護報酬について調べた事がありました。

そして当時の介護報酬の個別機能訓練加算(II)に関する算定要件には、こう書かれていました。

個別機能訓練加算(II)に係る機能訓練は,身体機能そのものの回復を主たる目的とする訓練 ではなく,残存する身体機能を活用して生活機能の維持・向上を図り,利用者が居宅において 可能な限り自立して暮らし続けることを目的として実施するものである。

具体的には,適切なアセスメントを経て利用者の ADL 及び IADL の状況を把握し,日常生活における生活機能の維持・向上に関する目標(1人で入浴が出来るようになりたい等)を設 定のうえ,当該目標を達成するための訓練を実施すること。

                      

引用元: 福岡市 ホームページ

つまり重篤誤嚥性肺炎で寝たきりにある例の利用者さんは、この算定要件には当てはまらない、当てはめる事ができないのでは?と私は考えたのです。

私はこれについて説明し、リハビリをするのは全く構わないが、いずれ来たる実地指導で指摘される可能性があるので、加算を取るのはやめた方がいいのではないか、やるならあくまでサービス扱いにした方がいいのではないかと管理者に提案しました。

しかしそれを聞いた作業療法士がすかさず「できます!そして加算だってちゃんと取れますから!!」と、私の提案を一蹴しました。

さらに管理者からはこう言われました。

「算定要件がどうとか、たかが機能訓練指導員という立場でごちゃごちゃ言わないで下さい。ケアプランを立てるのはケアマネですし、それに従うのが我々介護職員です。介護の世界では、ケアマネが立てたケアプランが絶対なんです。リハビリはきちんと加算をとって下さい。もし微妙だと言うならそこは実地指導で指摘されないように、記録もきちんとそれらしく書いて下さい。いちいち余計な事は言わずに、仕事なんて言われた事をただ言われた通りにやっていればいいんですよ」


管理者のこの言葉を聞いた時、その強気な姿勢に対して(おぉ!あんたよくそこまでハッキリ言い切ったな!)と心の中で拍手しました。

しかしだんだん怒りが込み上げてきて、「そう言われても私はそんな風には考えられないので、いっそのこと私をその利用者さんの担当から外して下さい」とめちゃくちゃ優しいトーンで言いました。
(逆に気味悪い)

慎重な私に反して「わかりました!まつかぜさんができないという事なら、私が引き受けますから!!」と作業療法士が威勢よく言ったので、結局その利用者さんの訓練は彼女に一任される事になりました。

後日同じく介護施設に勤務する理学療法士で、四国在住の友人にこの話をしたところ、「あり得ない!」と言って驚いていました。

「それ算定要件まるで無視してるじゃん。確かにそういう人に訓練をしたらダメとは書いてないけど、明らかに対象外やろ。うちの県でそれやったら多分ダメだわ。そもそも怖くて絶対しないけどね」

それを聞いて彼女の住む県はしっかりしているんだなぁと感心しました。

「そもそもそれって利用者さんの為じゃなくて、完全に加算をとるためだよね。だって呼吸も苦しい、しかも寝たきりって状態なのに訓練なんかして欲しいと思うかね?私だったらそっとしておいてよって思うけど」と憤る彼女に対し、私も心底同意しました。

なんでそんなにゆるゆるで許されるのか、私にはわからない

冒頭のフルーツショップのように、この当時の個別機能訓練の算定要件には、人によって受け取り方がどうとでもなるような、曖昧な記述が非常に多く見受けられました。

なので私はこの時の自分のとった行動は正しかったと今でも自信を持って言えますが、管理者や作業療法士のやり方もおそらく間違いではないはずです。

同じケースであっても、うちの自治体ではセーフ、友人の住む四国ではアウトという風にローカルルールが適用されるので、同じ日本なのにこんな支離滅裂な事態が発生してしまいます。

私はまだ介護保険を納めてはいませんが、この件があってから(そんな適当なやり方で被保険者は納得するのかな?)と考えるようになりました。

事実夫(←被保険者)は、「そんなザルみたいやり方で保険請求がとおるなら、介護保険納めたくないよね。だってちゃんとした使われ方してないじゃん」と腹を立てていました。
(ほんとその通り!)

昨年国会議員の文通費に領収書が必要ないのはおかしいのではないかと問題になっていましたが、この国の法律を作る方々の中には、頭が良い人はたくさんいても、常識的な考え方ができる人というのはどうやらあまりいないようです。

日本の税金の使われ方には無駄なものがひっじょーーーーーーに多いので、消費税増税など国民の不満を煽るようなやり方で税収を増やすのはやめて、まずはその無駄を無くすことから真剣に取り組んではいかがでしょうか?

おそらくそんな風に考えている国民は私以外にもたくさんいると思いますし、だからこそバラマキや謎の増税案に対して「なんでそうなるの!?」って頭に来るんだと思います。

そうそう、税金といえば!!

よく国の借金を国民1人あたりの借金に置き換えて報道したりしますが、あれは変な誤解を招くのでやめてほしいなぁと思います。

私はそんな、自身の年収を遥かに上回る借金をした覚えは全くもってありませんし、これを読んでいる皆さんだってそのはずです。
(ちなみに今年6月末の「国の借金」は過去最大の1220兆円にのぼり、国民1人当たりに換算すると約992万円らしいです)

もしそんなお金があったら、ガンメタのGT-R買います。
(超ペーパードライバー)

冗談はさておき、くどいようですがあれはあくまで政府がした借金であり、国の借金です。

国民が国民の考えでした借金ではありません。

政治家のお偉いさん方はその事を重々お忘れなく、気を引き締めて税金を扱っていただきたいと思います。

それと今回の記事で私の勤める職場の素晴らしさが少しでも皆様に伝わればいいなぁと願いながら、そろそろ終わりにしたいと思います。

長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。